人は毎日眠りにつきます。人が一生のうちに眠っている時間は人生の3分の1ともいわれ健康に影響することも分かっているのに、睡眠について学ぶ機会はあまりありません。
当たり前すぎて深くは考えたことのない『睡眠』のこと。今回はこの睡眠について考えます。
人ななぜ眠るのでしょう。
人は眠ると、起きている時に使っている体と脳の疲労を回復させます。しかし睡眠の目的はそれだけではありません。他にも記憶の定着、ホルモンバランスを整えるなど睡眠には重要な役割があるのです。
睡眠を適切に行わなければ、次の日のコンディションは悪くなり睡眠が病気の原因となることもあります。肌の調子は悪くなるし美容にも悪い。当たり前のことですが睡眠はとても大切なことなのです。
しかし美容や健康のために食事を気を付けることはあっても、睡眠のバランスや量を気にする人はあまりいません。日本では古くから敷布団文化で寝具の発展も遅れてきたこともあり、睡眠がないがしろにされがちなのが現状です。いざ自分で学ぼうとしても様々な情報があふれ正しい情報を選べなくなってしまう人も多いでしょう。
しかし昨今の研究によって、睡眠に関する最適解は絞られてきました。
では理想の眠りとはどのようなものなのでしょう。
理想の睡眠を獲得するのに大切なこと。それは「質」の追及です。
人が眠るとノンレム睡眠とはレム睡眠を繰り返します。
レム睡眠とは浅い眠りのこと。逆にノンレム睡眠とは深い眠りのことを指します。
一般的に人は眠ると、眠りの深いノンレム睡眠から入り眠りの浅いレム睡眠に映ります。その後およそ90分感覚でノンレム~レム睡眠が繰り返されます。
睡眠中には⾃律神経や脳内科学物質が働きやホルモン分泌が⾏われ、脳を休め体を修復回復させるなどの働きをしています。覚醒へ近づくと覚醒作⽤のあるホルモンを分泌させ、徐々に⾎圧や脈拍を上げ⾃然な⽬覚めにつながります。
ここで大切なのは『最初の約90分に行うノンレム睡眠』です。
最新の研究では「睡眠の質」とは「睡眠直後の約90分のノンレム睡眠の深さ」と定義され、この90分をいかに深く眠れるかが重要といわれています。
なぜ最初のノンレム睡眠が重要なのかというと、それは睡眠直後90分のノンレム睡眠が「自律神経を整えること」「成長ホルモンの分泌を促すこと」「その後の睡眠を向上すること」へ深くかかわっているからです。
人が眠るとノンレム睡眠に入ります。すると自律神経の一つである交感神経が弱まり、休息時に働く副交感神経が優位となっていきます。『自律神経』は生命活動を支える大切な神経。活動時に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経、このスイッチの切り替えがうまくいくことで心身ともに休息ができます。しかし眠りが浅ければこのスイッチの切り替えはうまくいきません。睡眠直後から深いノンレム睡眠に入ることで、自律神経のリズムが整い効率的に心身を休めることができるのです。
また深い眠りは『成長ホルモン』の分泌にも影響を与えます。成長ホルモンとは名の通り幼少期では体の成長を促すホルモンで、成人期には「細胞の修復」や「疲労回復」などの新陳代謝を促す作用があります。つまり成長ホルモンが多く分泌されるほど新陳代謝が上がり、美容や健康に良いのです。そしてこの成長ホルモンは睡眠直後のノンレム睡眠で多く分泌され、深さに比例して分泌量が増えることがわかっています。
最後の『以降の睡眠への影響』ですが、実は睡眠直後のノンレム睡眠が一晩を通して一番深いのです。最初が一番深いということはその後のノンレム睡眠は覚醒に向け徐々に浅くなっていくということ。つまり最初のノンレム睡眠が浅くなってしまうと、以降のノンレム睡眠もさらに浅くなってしまうのです。睡眠直後のノンレム睡眠を深くすることが以降の睡眠の深さを決め、自律神経の調整、成長ホルモンの分泌を促すのです。
睡眠の質を高めるにはこの『最初の約90分に行うノンレム睡眠』が大切なのです。
では具体的にどのように質を上げるのか。
大きく工夫できる4つのポイントをあげていきましょう。
- 【体のコントロール】
- ①寝る前の準備
- ②睡眠時間
- 【環境のコントロール】
- ③室内環境
- ④睡眠環境
人が眠るには、メラトニンというホルモンが分泌され睡眠直前に体温が下がることが大切です。そのためには正しく体内時計を働かし、体温の調節をすることが重要になってきます。
その前提を踏まえ一つ一つ解説していきましょう。
【体のコントロール】
<寝る前の準備>
・光
睡眠に必要なメラトニンというホルモンは光によって分泌量を調整しています。そのため夜が近づくにつれ分泌量が増えるのですが、夜中に強い光を浴びると体内時計が狂いメラトニンの分泌量が減って寝つきが悪くなってしまいます。部屋を暗くしても寝る前に携帯電話の強い光をあびると体内時計が狂ってしまうのでなるべく避けましょう。
また起床時に朝日を浴びることで体内時計をリセットし覚醒しやすくなりますので、朝日を浴びることも有効です。
・食事
睡眠直前の食事は内臓が覚醒し、睡眠の準備を妨げます。食事は寝る予定の3時間前にはすませましょう。どうしても小腹がすいてしまったときは消化の良いものを少量とると良いでしょう。
また睡眠の誘いは体温が下がることで促進されます。そのため事前に冷やしすぎてしまうと体温の変化が少なくなり睡眠をうまく誘導できません。眠る前の冷たい夜食は避けましょう。
・運動
適度な疲労感は睡眠を促しますが睡眠直前に運動を行うと体を興奮状態にしてしまい、体温も必要以上に上げてしまいます。運動は心身ともにメリットが多いですが、眠る前の2時間前にはすませるようにしましょう。
・衣服
おすすめは軽装で吸水発散性の良いものです。
吸水発散性の悪いを衣服を着ると汗が衣服にたまり、その汗で体が冷えて必要以上に体温が下がってしまいます。厚着のしすぎも寝返りを妨げになり、質の良い睡眠を阻害します。なるべく1枚で綿などの吸水発散性が良い素材のものを選びましょう。
服装は軽く、寒さなどへの対策は寝具で調整するのが理想的です。
<睡眠時間>
日本人の平均的な睡眠時間は約6時間30分とされていますが、これは世界的に見ても短くアメリカに比べると1時間、ヨーロッパと比べると2時間も短い時間となっています。また睡眠時間が6時間を切る短時間睡眠の方は全体の40%ほどとも言われています。しかし、たくさん眠れば良いというわけでもありません。最新の研究では睡眠時間は長すぎても短すぎても寿命を縮めるという研究結果があり、日本では平均7時間睡眠する方が1番寿命を延ばしたという研究結果があります。
個人によって適正睡眠時間は違うものの、7時間前後は確保できるよう心がけてみましょう。
【環境のコントロール】
<室内環境>
・温度と湿度
室内温度は夏28℃前後、冬18℃前後。湿度は50%前後が理想といわれています。
夏と冬で温度差がありますが、これは寝具の状況によるものです。夏は涼しい薄い寝具、冬は暖かい寝具を使っているのでこの寝具とのバランスで理想の室内温度を設定しています。エアコンや過除湿器、換気などでうまく調整しましょう。
・明るさ
明るさは好みがあり適切な明るさには諸説ありますが、完全な暗闇では不安を感じてしまうので常夜灯やベッドのフットライド程度の「微弱な明るさ」が眠りやすいとされています。
・音
基本は無音で良いですが、不眠などが続く場合はヒーリングミュージックなどでリラックスさせると効果が出る場合があります。テレビをつけたまま眠ったり、大きな音での音楽鑑賞は眠りの質を妨げるので避けましょう。
<睡眠環境>
これはベッドや敷布団、掛け布団からなる「寝る場所の環境」を指します。
温度は33℃、湿度は50%が理想とされ、ベッドや敷布団は硬すぎず、掛け布団は軽いもの。枕は高さがあっているもの。シーツやカバー類は吸水発散性の優れたものが理想です。特に上質な羽毛布団は温度や湿度を理想の状態に調整してくれるためオススメです。
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<まとめ>
睡眠は日常生活のさまざまな場面に影響を与えます。よい眠りを追求することがあなたの悩みを解決へと導くかもしれません。睡眠と覚醒は表裏一体なので、生活サイクルを整えるだけでも睡眠の質は高められます。眠りについて正しく学び、少しずつ実践していきましょう。
まずはできることから。
手始めに寝具を見直すことから始めてみるのもいいかもしれませんね。真新しい布団で眠る瞬間はいつだってわくわくするものです。